2006-05-29 [長年日記]
■こどものためのドラッグ大全
p166
ドラッグ問題について、良い情報も悪い情報も隠すことなく、また、偽りなく子どもたちに教えることだけが、ドラッグで引き起こされる悲劇を最小限にする、というぼくの考えに揺るぎはない。ドラッグ問題は「嘘も方便」ですますことのできる領域ではない。
というのがこの本の立場。例えば、
p30
アルコールはこの効果をあらわす量と致死量との差が小さいので、毎春、大学の新入コンパで「一気飲み」をして、急性アルコール中毒で死亡する若者が出るわけだ。
「この効果をあらわす量」というのは「ドラッグとしての効果をあらわす量」のこと。アルコールをドラッグに位置づけた上で――事実アルコールの飲用は理性を麻痺させ情動を増進させるし、依存症もある――ドラッグとしての効果があらわれる量と致死量という関連で説明している。
p106
ほろ酔いが血中アルコール濃度0.05%から0.1%、致死量が血中アルコール濃度0.4%以上だ。つまり致死量が薬効量の四倍程度でしかない。薬効量と致死量がここまで近いドラッグはアルコールと抗ガン剤ぐらいだ。つまり、「ずいぶん飲んでしまった」というだけではすまない。
急性中毒での致死量で言えばアルコールは抜群に危険だし、(現在は)合法ということもあって入手の難度も極端に低い。こういう視点からの説明は、単に「一気飲みは危険」と言うだけよりも、整然としていて説得力を持つ。
p34
よく、「天然のドラッグは依存もなく安全だけれど、合成されたものは依存があり危険だ」と太鼓判を押すひとがいる。「大麻(マリファナ)はナチュラルなドラッグだから大丈夫」などといわれたりもする。
しかし、これは誤った考えだ。世の中には、自然界に存在する危険なドラッグがたくさんある。その一方で、実験室で合成されたけれども、とても安全で、われわれの生活に大きく寄与している有益なドラッグがたくさんある。
ただし、ナチュラルなドラッグで、宗教的儀式などに太古から使われてきたものは、多くのひとが、長い時間をかけてテスト(人体実験)してきたものだから、つい最近実験室で合成され、まだあまり人体実験を経ていない新薬よりも安全であるのは間違いない。
「天然成分100%」なんてキャッチが横行しているけど、そんな戯言を信じちゃいけない。アスベストだって天然由来のものだったのだから。
あと"人体実験を経ていない新薬よりも安全である"とあるけど、これは当然用法のノウハウを持っていればということだ。科学的な解析(還元主義的な立場)ではなくて、経験知の集合ということだと漢方薬のそれに近いのかも。
p56
「覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか」というポスターはきわめつけの洗脳*1ポスターだ。それに、この強烈なコピーのせいで、覚醒剤依存症から立ち直ろうとしているひとたちが、「非人間」扱いされることにより、かえって社会復帰を妨げられている、という皮肉な事態も起きている。
p134〜5
身近な友達や教師は、ドラッグ問題ではあてにならないかもしれない。(略)ドラッグを止めたいと思い切って相談したのに、相談した教師から「ヤク中」というレッテルを張られ、ひどく叱責されたひとをぼくは知っている。
警察や教育委員会に連絡されることもある(そうしないと教師自身が咎められるからだ)。教師がたとえ人格的、学問的に優れたひとであり、人間としては信頼できても、ことドラッグに関してあまり期待できないのは、彼らがドラッグ問題に関して、バイアスのかかった情報しかもっていないこと、そうした問題を扱ったことがなく、経験不足なこと、そして、違法行為を関係機関に通報しなければならない立場にいるからである。
きみが、なんらかのドラッグの依存症で苦しんでいるなら、こころの病気を扱う、病院の精神科や心療内科を受診することも大切だ。
どこかのページに「かつての精神病患者と同じような状況」という表現があったと思う(メモ取ってない)。
精神病、神経症などはいくらか状況は改善されてきつつあるのだろうが、ドラッグに関してはまだまだなのだろう。自分自身でなくても、周りの人間が上記のような状態にあって、その人から相談を受けたときやそうであるという事実を認識したときに、適切な対応が取れるだろうか?
ドラッグ=悪と決めつける様な資料ではそういったことが分からない。どんなドラッグを使っていて、どのような性質があるのか――つまり依存性が強いのかどうかとか、身体依存になっているのか精神依存になっているのかとか、そういった知識を得る機会がない。そのような知識を普段から持っておく必要はなくとも、どこでどうやって知識を得ることができるのか、もまた一つの知識であろう。
最後に、「エクスタシー」の項にある熱中症に関する文を引用する。
p77
しかし、それにもかかわらず、レイヴ会場などで誰かが熱中症で倒れ、意識を失ったなら、たとえ非合法なドラッグをやっていようがいまいが、そのひとを助けたいなら迷わず119番通報をして救急車を呼ばなくてはならない、ということは覚えていて欲しい。
追記
買ったときに書いたエントリにも引用したけどもう一度。
p57
「怖いぞ、怖ろしいぞ」とあまりに煽りすぎて、じっさいにちょっと手を出したひとが「なんだ、警察や世間でいわれているほど恐ろしくない」と思って油断し、次第に深みにはまり、だんだんとやめることが難しくなっていき、知らぬままに妄想に支配されて犯罪をおかす、という盲点や罠を見事に作り出している。
ネガティブ・キャンペーンに普遍的に存在する罠だと思う。
追記
この本に書かれていることが妥当かどうかということには確信が持てない。それは比較対象になる資料がないため。
■ジェニーの肖像
まだ1つだけ在庫あるなぁ(2006-5-29時点)。
切ない、切ないなぁ。
SF というよりも幻想譚。幻想譚というよりもラブストーリィだなぁ。
涙する、という感じじゃなくて、じーんと心にしみる、という様な素晴しきラブストーリィ。
「古き良き」ハリウッド映画ってこういうのをいうのか。
「同じ時代に生まれたのも偶然だ
こう思わないか
違う時代に生まれたら別の人を愛していた」
「いいえどんな時代だろうと愛するのは一人」
うわ〜。こうやって書いてみると歯が浮くな〜。だけどそういう台詞をなんのてらいもなく言ってみせることができる、そして感動を与えることができるのは、これが"幻想譚だからこそ"だとも思う。
の編集序文にももちろん名前が出てくる(これに収録されている『春よ、こい』恩田陸は傑作!)。
の「TTもの分類表」にももちろん入ってる(下巻はasin:4150308039)。
余談
最後の嵐のシーンはセットに低速度撮影で撮ったのだろうか? そうならすごくよくできている、と思った。1948年作品――『ゴジラ』の6年前――ということを考えると"よく撮ったなー"と思いながら見ていた。
最後の最後でテクニカラーを使うのも凝ってる。
■CSSのクリーンアップ
このような、CSS上で2重に指定されている要素や、未使用の要素の自動的に検出して、修正出来るようなソフトやテクニックを探しています。
人力検索はてな - 以下の内容のHTMLファイルと、それにリンクされているCSSファイルがあったとします。
類似。
CSSのクリーンアップ(プログラミング流に言えばリファクタリング)を「支援」してくれるソフトってあるものでしょうか。
人力検索はてな - CSSのクリーンアップ(プログラミング流に言えばリファクタリング)を「支援」してくれるソフトってあるものでしょうか。
*1 私はこういう文脈で"洗脳"という言葉を使うのは嫌いなのだけど……。