2006-05-15 [長年日記]
■must or better
それは must か? better か?
must ならやれ。
better ならするな。
ただし、いずれ must になるのならそのタイミングを見据えろ。その時にやれ。
8割方は受け売りだけど。
■じゃあ、オカルトって?
一昨日の 科学的,非科学的,オカルト から引き続き。
「ちょっと話を戻していいかな」
しばらく考え込んでいた様子だったが、ようやく顔をあげて、しゃべりはじめた。
「『間違った非科学的』と『間違ったオカルト』を等号でつないで分かった気になっている、ってのはまぁいいんだけどさ、じゃあ『本来の意味のオカルト』って、一体なんなの?」
あぁ! 心の中で嘆息をもらす。いや、まぁ、あたりまえなんだけどね。でもそれは一体、どこから説明したらいいんだろう!?
「まぁ、表面的なことを言えばさ、キリスト教によって徹底的に弾圧され、地下に潜ってしまった古い知識の復興、ということになるんだけど……」
最後の方は消え入る様な口調。まるで次の言葉を探しているような。
「キリスト教圏が拡大するに連れて、改宗させられていった地域の、古い神が悪魔に形を変えて、古い因習が悪魔の業とされていった……。それぐらいのことは知っているけど。そういった≪もの≫がオカルトだということ?」
「……それは確かにそうなんだけどね。問題なのは、復興された≪もの≫と、古い時代の≪もの≫と、一体どちらがより正しいのだろうね?」
ああ、と彼女は思う。
――古語で言うは、現代語で言うとは違う意味だったんだわ。なのにあたしはをにあてはめて、そんなものはありえないって勝手に思いこんでただけなのね。
そういうことか。事態は同じだ。ただその勘違いが起きた時代が、更に古いということなんだ。
「その『古い知識の復興』ってのは、いつごろだったの?」
「19世紀……の世紀末」
「判った。構造は判ったわ。『本来のオカルト』がずっとずっと古い時代の知識だとして、19世紀末に興ったという『オカルト』はその時点の――19世紀末の現代的な言葉や概念で解釈されてしまっているのね? そして19世紀末に興ったという『オカルト』も、やっぱり現代の『オカルト』とは違ってしまっているのね?」
すばらしい! と拍手してしまいそうになったが、それは心の中だけにしておく。でも、そこまで辿りついているなら問題はない。
「そう。さっきも言ったけど*1、誕生日から決まっちゃう太陽宮なんかで分けてしまうよなが堂々と雑誌に載ってたりもするのなんかいい例だよね」
p52
「(略)科学ってのは、誰がやっても同じようにできるものを指して言うものなんだよ。そこに熟練のワザが求められて、個人差によって結果の相違が生じてしまうものは技術って言うんだ。ゆえに技術は科学たりえないわけなんだけど、その科学もまた技術で支えられている部分が確かにある。ここんとこの似て非なるものの重なり合いを、無視しちゃってんのがオカルトだ。科学と非科学の対峙の外側にあるんだよ、オカルトってのは(略)」
「『本来のオカルト』ってのは、呪術にしろ占星術にしろ技術の側のものだったと思うんだ。特定の者だけが使える技術で、それは拡散することなく受け継がれていくものだったんじゃないかな。ところが19世紀末に興った『オカルト』は、その辺を無視してしまった。というか、そうせざるをえなかったのかもしれない
「『オカルト』っていう言葉はっていう意味らしいんだけど、実際はそんな生やさしいものじゃなかったはずなんだ。徹底的な弾圧を受けたわけだからね。それを掘り起こしていくには、分類し、系統をつけていくしかなかったのかもしれない」
短い沈黙。その後、彼女はぽつりと言った。
「『深い断絶の後に興った体系化された技術』」
引用は引き続き、
です。
が、今回は恣意的にねじまげて引用しました。
その他の文は私の創作ですが、作中の太一郎君の認識している『オカルト』はこのエントリで書いたものとは違うでしょう(きっと)。
これはもう断言しちゃいますが、このエントリの『本来のオカルト』にまつわる話は私の≪妄想≫です。オカルトにまつわるメタコンテンツ――ぶっちゃけると色んな小説や漫画とかが元なので、まぁ、≪妄想≫といっても良い類のヨタ話ですんで。
それにしても、今回は思った通りにならなかったなぁ。もうちょっと、雰囲気が出せるかと思ったのだけど、全然駄目でした。
*1 実際には書いていないことだけど。内容的には20060511.html#p07の引用を参照のこと。こんな話を前にしていたということにしておいて……。