過去の日記

2006-04-29 インターネットにおけるルール&マナーの教育の構図 [長年日記]

悪の生徒会長 2 [comic]

悪の生徒会長 2 (バンブー・コミックス)

  • 作者: 小笠原 朋子
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売: 2006-04-27
  • ASIN: 4812464595
  • メディア: コミック
  • amazon.co.jp詳細へ

「さくらハイツ102」もそうだったけど、物足りない終わり方だった。
いや面白かったけど。

それはそれ、これはこれ [etc]

内容の方はしっかりと笑わせていただきましたが。


たしかに、Winnyの話題で「違法行為を蔓延させた刑事責任は出版社にある」という指摘が出てくるときに真っ先に槍玉に挙がるのは「ネットランナー」であることが多いが、実際のところ同誌はそれほど悪質なものではなく、セキュリティ対策をキチンと啓蒙するなどの良い点もあるとの主張を耳にすることもあった。

高木浩光@自宅の日記 - 編集長が見て見てと言うので買ったネットランナー5月号の仰天内容

ここだけ読んで、あれ? と思った。
「セキュリティ対策をキチンと啓蒙するなどの良い点もある」というのと「違法行為を蔓延させた刑事責任」に繋がりがないぞ。
「違法行為を蔓延させた刑事責任」が本当にあるなら――まぁそれを判断するのは司法の仕事だけど――「セキュリティ対策をキチンと啓蒙」していたからといって罪が減免されるわけじゃないでしょう? ということ。


追記:トラックバックを2つ出してしまった。迂闊!


ついでの追記

「脆弱性」の理解は1割、「衝撃的」とIPA − @IT

あたりの記事も含めて考えると、"一般ユーザー"に「Wordには脆弱性があります」とか言うと「それで書いている途中で消えちゃったりするんだ」とか思われていそう。"一般ユーザー"からすると脆弱性≒虚弱性なのかも。
ところで……、"一般のインターネットユーザー"ってどういう母集団なんだろう。

インターネットにおけるルール&マナーの教育の構図 [etc]

学校・教育委員会の無断リンク禁止の、あるいは、「サーバー様」から続く話題。


"財団法人インターネット協会" のサイト。「インターネットにおけるルール&マナー 公式テキスト」というものを出している。
だけどこのサイト、どうしたものか……。


ウェブページで見ることができる、他の人が書いた絵や文章、他の人がとった写真なども、勝手に使ってはいけません。使いたいときは、それを作った人(著作権者)から許可をもらうことが必要です。

インターネットを利用するためのルールとマナー集(こどもばん)

からたどっていく「解説」。

だれか他の人が書いた文章や絵を、自分が作るウェブページや宿題のレポートなどに使いたいときには、その文章を書いた人やその絵をかいた人(=著作権者)から許可をもらわなければいけません。

解説

嘘を子供に教えようとしている。いや、教えさせようとしている、か?


(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

著作権法

このことを伝えていない。(余談。2項に依り、学校・教育委員会のサイトが無断転載禁止とした場合には従わないといけないのだろうか? と思ったりして)


自分で作ったウェブページの内容には責任をもちましょう。いい加減な内容のウェブページを作って公開してはいけません。

インターネットを利用するためのルールとマナー集(こどもばん)

自分のウェブページを公開するということは、世界中の人たちが、あなたの作ったウェブページを見るかもしれないということをわすれないようにしましょう。

解説

と書いておきながら、「自分のウェブページを公開するということは誰かがそれを報道、批評、研究などの目的で引用することがある」こと、それが「著作権の侵害ではない」ことを教えないのはなぜだ?


リンクをはる前に、リンクするときの条件や注意書きがあるかどうかを確かめましょう。よくわからなかったら先生や親などに相談しましょう。

インターネットを利用するためのルールとマナー集(こどもばん)

リンクに対する条件や注意書きが何も書かれていない場合や、「リンクを貼るときには連絡をください」と書かれている場合には、リンクを貼る前に、リンクを貼りたい(相手の)ページ、自分のページのURL、リンクの目的、公開は学校内かそれ以外か、などを記述して、リンクの許可を得るようにしてください。


リンクに関する注意を無視して安易にリンクをはると、リンク先の相手に不快な思いをさせたり、トラブルを生じたりする可能性があります。

教師・保護者の方へ

もう一度問う。
「自分で作ったウェブページの内容には責任をもちましょう」と子供に教えるのは何のためだ? 間違ったことや事実ではないことを書けば、誰かに批判されるだろう。リンクに対する条件や注意書きを盾にとって、そんな批判を封じ込めることなどできやしない。
「リンクに対する条件や注意書きが遵守されるべきものである」と、「リンクに関する注意を無視して安易にリンクをはる」のがよくないことだと、子供に信じさせてはいけない。
自分が書いたことがWWWを閲覧する多くの者の目に晒される可能性があることを、正しく伝えなければならない。「リンクしないでください」と書くのは意味のないことだと、教えなければならない。
あの日、あのコメント欄に*1、「此れでも駄目なら、サーバー様に相談しますので」と書いた人が、あのあとどういう思いでWebを見ていたのだろう? どうしてあの人はあんなことを書いてしまったのだろう? 先生に相談したりとかしたのだろうか? 後になってから「リンクしないでください」と書くのは意味のないことだと、そう知らされたら、どんな思いを持つのだろうか?


真に問題なのは市発行の「保護者の皆さまへ インターネットの有害情報から子供を守ろう!」なんて紙(というか学校から配られたプリント)で紹介されているのが、上記のような内容のサイトだということ。
正しくないリテラシを植えつけられようとしているのは、子供達だけじゃない! その保護者達もまた、その危険にされられているんだ!
さらにさらに恐ろしいことに、正しくないリテラシを植えつけようとしているのが無自覚な学校や教育委員会、総務省・経済産業省主管の財団法人だというこの構図!


2005年7月のこれ。

2005-07-25 - prima materia - laboratory
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10月のこれ。

スラッシュドット ジャパン | 北九州市と仙台市が小中学校に無断リンク禁止の明示を義務付け
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これらを経てもなお、仙台市や北九州市の学校・教育委員会に変化がないのがなぜか? 10月の slashdot.jp の記事なんか、"仙台市や北九州市"と名指しされていて、当の学校・教育委員会にとっては結構な恥だと思うのだけど?
仙台市や北九州市の学校・教育委員会は結局何の議論もしなかったのだろうか?(ちなみに、こんなことが話題になってますよ、という情報は両方の市教育委員会のサイトやメールアドレスに対してポスト済なのだ)
仙台市や北九州市在住の、保護者達は何もしなかったのだろうか?
その問いの答えを「保護者の皆さまへ インターネットの有害情報から子供を守ろう!」のプリントにみた思いがした。


子供達だけではなく、保護者達にも、同じ様なリテラシが育っているのではないのだろうか? という、それはとても嫌な予感。


最後に。エントリ中で何の断わりもなく"リテラシ"と書いているけれども、これは全て本来ならば"ネットワークリテラシ"や"Web リテラシ"、もしくは"情報リテラシ"とするべきところを、くどくなるので省略しているだけ。勘違いなきように。

*1 なんのことか判らない人は、ちょっと右に書いてある"サーバー様"のリンクをご覧あれ。