2005-12-10 集合とか無限とか極限とか [長年日記]
■TeX 極限
……なんで「TeX 極限」の検索の上位に食い込んでくるのだろうか?
まぁ、いいや。追記しておこう。
\lim_{n \rightarrow \infty}a_n
\(\normalsize\displaystyle~\lim_{n~\rightarrow~\infty}a_n\)
……TeX で検索してここに来た人は、どうかイメージのalt属性を見てください。ということでよろしく。右クリックからShow Sourceでどうぞ。
「TeX 自然数の集合」という検索からのアクセスも多いなぁ。
n \in {\mathbb N}
かしらん。
\(n~\in~{\mathbb~N}\)
の方がいいか。
referer をチェックされているので、画像がちゃんと出ない場合はその辺の問題ですよ。っと。
追記
もしかして、
\lim_{n \to \infty}a_n
が普通?
\(\normalsize\displaystyle~\lim_{n~\to~\infty}a_n\)
追記
このエントリを執筆当時は mimeTeX を使用していましたが、今は javascript ライブラリの jsMath を使ってます。
さらに追記
今はMathJaxになりました。
■雑感
以下の2つのエントリは、セットになっています。
1つ目のエントリ、
を書いた時点で2つ目のエントリの
への流れは見えていました。
ですが、時間的な理由と、2つ目のエントリの途中で1つめのエントリの冒頭の文が活きてくることが見えたという構成上の理由から2つに分けました。
それにしても……、\(\normalsize\displaystyle~\alpha\)
は"アルファ"に見えなくて、普通のアルファベットの"a"(TeXだとこう→ \(\normalsize\displaystyle~a\)
)との区別もつかないですね。
\(\normalsize\displaystyle~n_0\)
も、"nに下付の0"(HTMLだとこう→ n0 )に見えません。
部分的にTeXで書いたものを普通のHTMLに書き直した方がいいのかも……。
意図的にすごく遠回りをしましたが、
\(\normalsize\displaystyle~\sum_{i~=~1}^{n}~1\)
これが自然数の定義です。そしてn→∞の極限を考えれば、
\(\normalsize\displaystyle~\lim_{n~\rightarrow~\infty}~\sum_{i~=~1}^{n}~1\)
ということ。これは「正の無限大に発散する」。けれども「自然数」ではないでしょうか。
に対する回答は簡潔です。
\(\normalsize\displaystyle~\lim_{n~\rightarrow~\infty}~\sum_{i~=~1}^{n}~1~=~+\infty\)
であり、単に「自然数の数列は正の無限大に発散する」すなわち「自然数は無限に存在する」ということを、総和の記号\(\sum\) と数列の極限という数学的な道具で表現しただけのことです。
したがってこれは自然数を表現するものではありません。
でよかったんですけどね。
追記 23:40
あえて触れないでおいたのですが、やっぱり誰かに指摘される前に書いてしまいます。
\(\normalsize\displaystyle~\sum_{i~=~1}^{n}~1\)
これが自然数の定義です。
これを「自然数の定義」と呼ぶのはまずいです。
iに対して1からnまで数え上げるためには先に自然数が定義されていなければなりません。なので自家撞着(言葉の使い方あってる?)になってしまっています。
それに目を瞑って、
自然数nを\(\normalsize\displaystyle~\sum_{i~=~1}^{n}~1\) と表記することができます。
という文にすれば、以降の話に影響がないはずですが(だから特に指摘しなかった)。
■無限とか極限とか その続き
「自然数は無限に存在する」という言葉を言い換えると、「どんな自然数 n に対してもそれよりも大きな自然数 m が存在する」となります。
「自然数は無限に存在する」ということは「『他のどんな自然数よりも大きな自然数』なんていうものは存在しない」ということでもあるのですよ。
もし仮に「有限の桁数では表記できない自然数がある」ことを認めてしまったら――それを上の「どんな自然数 n に対してもそれよりも大きな自然数 m が存在する」の n に当てはめた時に、それよりも大きな自然数 m はどのように表記すればいいのでしょうか?
これはまぁ、背理法の様なものなので。
それよりも大きな自然数 m はどのように表記すればいいのでしょうか? 表記する方法は無いですね? ということは「有限の桁数では表記できない自然数がある」という前提は間違いなのです。
と続けたかっただけです。
次。
\(\normalsize\displaystyle~\sum_{i~=~1}^{n}~1\)
Log of ROYGB - 有限の桁で表現できる無限の数
これが自然数の定義です。そしてn→∞の極限を考えれば、
\(\normalsize\displaystyle~\lim_{n~\rightarrow~\infty}~\sum_{i~=~1}^{n}~1\)
ということ。これは「正の無限大に発散する」。けれども「自然数」ではないでしょうか。x > 0 の時、1/x > 0 です。1/x が 0 になることは決してありませんね?
でも、\(\normalsize\displaystyle~\lim_{x~\rightarrow~\infty}~\frac{1}{x}\) は 0 です。
なぜこうなるのでしょう?
もっと厳密に数列の極限というものを考えます。
Wikipediaの"極限"の項目から引用しましょう。
これによれば、数列\(\{a_n\}\) がある値αに収束するとは、次のようなことを言う。
\(\normalsize\displaystyle~\forall~\varepsilon>0~\;\exists~n_0\;~\textrm{~s.t~}\;~\bigg[n>n_0\Rightarrow~|a_n~-~\alpha|<\epsilon\bigg]\)
なんのことだから判らない? 言葉で説明しましょう。
0より大きなどんな\(\epsilon\)
に対しても、\(n_0~<~n\)
なる\(n\)
について\(a_n\)
とαとの差が\(\epsilon\)
より小さくなるような\(n_0\)
が存在する。
もう一度、ほんの少しだけ言い換えて書き直します。
0より大きなどんな小さな数\(\epsilon\)
に対しても、ある項\(a_{n_0}\)
以降の全ての項で\(a_n\)
とαとの差が\(\epsilon\)
より小さくなるという、そんな\(n_0\)
が必ず――数列をどんどんどんどん先に進めていくことでやがて必ず――見つかる。
そのような性質を数列\(a_n\)
が持っている場合、数列\(a_n\)
は収束するといい、そのαを極限といいます。そして、そのことを、
\(\normalsize\displaystyle~\lim_{x~\rightarrow~\infty}~a_n\)
= α
と表記します。
「1/x が 0 になることは決してない」という事実があっても、数列\(\normalsize\displaystyle~\frac{1}{x}\)
が0に収束する以上、\(\normalsize\displaystyle~\lim_{x~\rightarrow~\infty}~\frac{1}{x}~=~0\)
と書けるのは当然です。
ふう。
ずいぶんと前振りが長くなってしまいました。
そろそろ本題に入っていきましょう。
今度は、数列\(a_n\)
が無限大に発散する、ということを厳密に考えるとどうなるでしょう?
私も面倒なので数式は書きません。
0より大きなどんな\(\epsilon\)
に対しても、数列のある項\(a_{n_0}\)
以降の全ての項で\(a_n~>~\epsilon\)
となるような\(n_0\)
が存在する。
ほんのちょっとだけ言い換えます。
どんな大きな数\(\epsilon\)
に対しても、数列のある項\(a_{n_0}\)
以降の全ての項で\(a_n~>~\epsilon\)
であるような\(n_0\)
が必ず存在する。
ここまではいいでしょうか?
どんな大きな数\(\epsilon\)
に対しても、数列のある項\(a_{n_0}\)
以降の全ての項で\(a_n~>~\epsilon\)
であるような\(n_0\)
が必ず存在する。
これに似た文をどこかで見ましたね。
前のエントリと今回のエントリの冒頭です。
「自然数は無限に存在する」という言葉を言い換えると、「どんな自然数 n に対してもそれよりも大きな自然数 m が存在する」となります。
n はそのまま\(\epsilon\)
に対応します。
自然数を一つの数列と見なすと、自然数 m は数列の「m 番目の項」になります。
どうでしょう? そっくりじゃないですか?
今までの議論を踏まえて、id:ROYGB さんの記述、
\(\normalsize\displaystyle~\sum_{i~=~1}^{n}~1\)
これが自然数の定義です。そしてn→∞の極限を考えれば、
\(\normalsize\displaystyle~\lim_{n~\rightarrow~\infty}~\sum_{i~=~1}^{n}~1\)
ということ。これは「正の無限大に発散する」。けれども「自然数」ではないでしょうか。
を振り返ってみてみます。
\(\normalsize\displaystyle~\lim_{n~\rightarrow~\infty}~\sum_{i~=~1}^{n}~1~=~+\infty\)
これは文字通りには、数列\(\sum_{i~=~1}^{n}~1\)
は正の無限大に発散する、ということを表現しています。
これが意味するところは、一体なんでしょうか?
単純にして明解なある1つの事実の、単なる別の表現でしかないのです。
「自然数の数列は正の無限大に発散する」。
それはすなわち、「自然数は無限に存在する」。
■無限とか極限とか 疑問に質問を以て返すメソッド
しかしながら、「自然数は無限に存在するが、個々の自然数は有限である」ということらしいいです。
Log of ROYGB - 有限の桁で表現できる無限の数
「自然数は無限に存在する」という言葉を言い換えると、「どんな自然数 n に対してもそれよりも大きな自然数 m が存在する」となります。
証明はしませんが「どんな自然数 n に対してもそれよりも桁数の大きな自然数 m が存在する」も成立するでしょう。
さて自然数 n の桁数は?
んー。あまり適切では無かったか。
仕切り直し。
「自然数は無限に存在する」という言葉を言い換えると、「どんな自然数 n に対してもそれよりも大きな自然数 m が存在する」となります。
「自然数は無限に存在する」ということは「『他のどんな自然数よりも大きな自然数』なんていうものは存在しない」ということでもあるのですよ。
もし仮に「有限の桁数では表記できない自然数がある」ことを認めてしまったら――それを上の「どんな自然数 n に対してもそれよりも大きな自然数 m が存在する」の n に当てはめた時に、それよりも大きな自然数 m はどのように表記すればいいのでしょうか?
\(\normalsize\displaystyle~\sum_{i~=~1}^{n}~1\)
Log of ROYGB - 有限の桁で表現できる無限の数
これが自然数の定義です。そしてn→∞の極限を考えれば、
\(\normalsize\displaystyle~\lim_{n~\rightarrow~\infty}~\sum_{i~=~1}^{n}~1\)
ということ。これは「正の無限大に発散する」。けれども「自然数」ではないでしょうか。
x > 0 の時、1/x > 0 です。1/x が 0 になることは決してありませんね?
でも、\(\normalsize\displaystyle~\lim_{x~\rightarrow~\infty}~\frac{1}{x}\)
は 0 です。
なぜこうなるのでしょう?
■集合のお話とか
思えば、
無限に関する質問です。
http://www.hatena.ne.jp/1130932358
から続いている「2のべき乗の集合のべき集合」絡みの問題について整理していないのでこれをやってみよう。
集合 A を2のべき乗の集合とする。つまり、
\(~A~=~\{~2^{n}~|~n~\in~N\}\)
である。(\(~N\)
は自然数の集合、ただし0を含む)
簡単に書くと、\(\normalsize\displaystyle~A~=~\{1,~2,~4,~8,~16,~\cdots\}\)
ということ。
Aのべき集合を考える。(べき集合の記号は\(~2^{A}\)
であるがややこしいので当面使わない。)
\(\normalsize\displaystyle~\{\phi,~\{1\},~\{2\},~\{1,2\},~\{4\},~\{1,4\},~\{2,4\},~\{1,2,4\},~\{8\},~\cdots\}\)
という集合になる。
空集合はとりあえず無視するとして、その他の元について「その要素の和」を考えてみる。
実は先の記述は意図的な並び方で書いた。
要素の和をとると、\(\normalsize\displaystyle(1,~2,~3,~4,~5,~6,~7,~8,~\cdots)\)
となる様に並べている。
つまり、元の「要素の和を取る」ことは、「2進数で自然数を表現する」ことに他ならない、ということだ。
ここまででおかしなことが起きている。
Aは可算無限集合である。
Aのべき集合は連続無限集合である。(カントールによる証明は割愛)
にもかかわらず、Aのべき集合の元について「要素の和を取る」ことで「自然数」と対応がとれている様に見える。これではAのべき集合が可算無限集合であるということになってしまうのではないか? という疑問がでてきた。
もちろん、そんなことはありえない。
実は、欺瞞――トリックが存在する。
何か。
Aのべき集合は連続無限集合であることは最初から判っている。
にも関わらず、
\(\normalsize\displaystyle~\{\phi,~\{1\},~\{2\},~\{1,2\},~\{4\},~\{1,4\},~\{2,4\},~\{1,2,4\},~\{8\},~\cdots\)
というように、いかにも要素に順番を付けることができるかの様に並べて書いたことだ。
そう。可算無限集合で無いことを知っていながらも可算無限集合に見える様に意図的に記述した。
Aのべき集合の中には、A自身も含まれている。その「要素の和を取る」と果たしてどうなるか?
\(\normalsize\displaystyle~\sum_{i~=~0}^{\infty}~2^{i}\)
となる。これは正の無限大に発散し、すなわち「自然数」ではない。
Aのべき集合の元には、有限集合もあれば、(A自身の様に)無限集合も存在する。
「要素の和を取る」ことができるのは、Aのべき集合の元のうち、有限集合の元だけだ。無限集合の元について「要素の和を取る」ことを考えてしまうと、全て正の無限大に発散するのみである。
Aのべき集合の元のうち、有限集合の元だけを集める。それは当然無限集合になる。以下の様な感じになる。
元の数が1個の元の集合。\(\normalsize\displaystyle~\{\{1\},~\{2\},~\{4\},~\{8\},~\{16\},~\cdots\}\)
元の数が2個の元の集合。\(\normalsize\displaystyle~\{\{1,2\},~\{1,4\},~\{2,4\},~\{1,8\},~\{2,8\},~\cdots\}\)
元の数が3個の元の集合。\(\normalsize\displaystyle~\{\{1,2,4\},~\{1,2,8\},~\{1,4,8\},~\{2,4,8\},~\cdots\}\)
\(~\vdots\)
「元の数がn個の元の集合」自体が無限集合だ。そして「元の数がn個のもの元の集合」も無限に続いていく。
「Aのべき集合の元のうち、有限集合の元だけを集めた集合」は、上記の(無限に続く)集合の和集合ということになる。
さて、「Aのべき集合の元のうち、有限集合の元だけを集めた集合」は果たして可算無限集合か連続無限集合か?
答えは、可算無限集合である。
「Aのべき集合の元のうち、有限集合の元だけを集めた集合」の元は、有限集合で2のべき乗の自然数から成っている。
それは――ここでようやく最初の目論見に立ち返ることができた!――2のべき乗の集合を用いて自然数を表現することに他ならない。「2進数を用いて全ての自然数を表現する」ということと「2のべき乗の集合を用いて自然数を表現する」ということのアナロジーが完成する。
だから、可算無限集合なのだ。
で、ここ最近の「自然数の桁は有限でおさえられる」という話題にも立ち返ることができる。
実は「自然数の桁は有限でおさえられる」という命題は2進数で考えた方が楽だったのだ。
「2進数で表記する」ことを「2のべき乗の集合」に置き換えるという、id:ROYGB さんのアイデアは実に秀逸だった!
自然数を「2進数で表記する」→「2のべき乗の集合」に置き換える→「2のべき乗の集合」は有限集合でなければならない→自然数を2進数で表記した時の桁数は有限となる、という様に連想することができるから。
だから、他ならぬ ROYGB さんから「不思議に思います」というコメントがついた時には――実は――ちょっとびっくりしたのだった。
次行こ。
ある集合 A に対して、\(~2^{B}~=~A\)
(ここで書いた \(~2^{B}\)
は B のべき集合のこと)なる B を求めるという概念を一般化することはできない。
これは簡単。
空集合\(~\phi\)
を含まない集合は、他の集合のべき集合には絶対になれない。
以上。
次。
ある集合Aのべき集合が\(\aleph_{0}\)
になることはない、はまだ証明できてない。
選択公理が有効ならば、任意の無限集合は部分集合として可算無限集合を含むことが言えるので、そのべき集合の濃度は真に可算無限集合より大きい、で済む。
素朴集合論の範囲で対角線論法から証明できる様な気はするのだけど、よく判らない。