過去の日記

2006-10-17 [長年日記]

「有害サイト等から学校と児童生徒を守る」ことよりも「周りがどうなっているか」の方が大事な仙台市教育委員会 [etc]

無断リンク禁止関連の話でここ一年の間、仙台市教育委員会と北九州市教育委員会がホットだった(この辺もホットだけど干渉せず)。
「仙台市立学校におけるインターネットの利用に関する要領」なるものが策定されていてそれは、学校サイトへのリンクは校長の許可が要ります、という内容を学校サイトに入れなさいというものだった。
この要領はふと気がつくと教育委員会のサイト内からページが消されてしまっている。かわりに「仙台市教育情報ネットワークの利用に関する要項」という要領に切り替わっているようだ。
しかし、教育委員会や教育センターのサイトにそのページはない(見つけられない)。困ったものである。
いくつかの学校サイトで確認できる。そのうちの1つを書いておく。上に書いた内容は「第8条」にあたる。(追記:今はもうない。このエントリの最下の段落を参照のこと。)

http://www.sendai-c.ed.jp/~kuromatu/kitei.htm


さて、2006/9/21の高木さんの日記のエントリに、

北九州市と仙台市の教育委員会の事例は、電話しても会話が成り立たないと予想する。

高木浩光@自宅の日記 - 「リンクお断りは普通」と人の心に種を蒔くAC

と書かれていた。まぁそうかもなぁ、とも思いつつもう一度教育委員会のサイトを調べてみて、最初に書いたような状況が判った。
実はしばらく静観していようかとも思っていたのだけど、ここは一つアクションを起こしてみることにする。
教育委員会のサイトからではなくて、市のサイトから「教育委員会にこんな規約があってここ1年の間にWeb上で仙台市と北九州市の教育委員会が名指しで出てくるんですけど、市としてはどうお考えですか?」というような感じの文で投稿してみた。高木さんのエントリやスラッシュドットジャパンの記事の URL を併記して。
私の意図としては「市のサイト管理の面からどうなんですか?」という様なニュアンスで書いたつもりだったのだけど、2週間ほどしてから教育センターからメールがあった。市のサイト管理者は教育委員会か教育センターに丸投げしたらしい。ちょっと悲しいが、これは私の力不足というものだろう。


さて、メールにはこうあった。

ご質問いただきました件につきまして,ご回答いたします。
「仙台市教育情報ネットワークの利用に関する要領」に「第8条」が
設定された理由は,有害サイト等から学校と児童生徒を守るという
観点からであり,リンクを禁止するということではありません。
これは,教育的な配慮からリンク元のWebページの内容が,法令や
公序良俗に反する場合などにはリンクの削除をお願いすることもある
ことから規定しているものでございます。
しかしながら,一般のWebページや公共のWebページにつきましては
こうした表示がなされなくなってきたこと,学校情報の積極的提供
などの観点から,仙台市教育委員会といたしましては,「第8条」に
ついての見直しを今後検討していきたいと考えております。

斜め読みして、へぇ、見直しを検討している……の……か……(脱力)*1


こら! ちょっと待て! 余計悪いわ!


つい頭に血が上って、その日のうちに2通ほどメールしたのだけど、回答がないまま2週間ほど過ぎたのでそろそろ話題としてあげることにした。


今回の教育センターのメールは、今までの学校/教育委員会の対応と決定的に違う点があり、それはとても重要なことだと思う。
再び高木さんの日記の話になるが、2006/9/23のエントリ、

高木浩光@自宅の日記 - 会社のポリシーは会議室で決めてない、現場でコピペしてるんだ, 追記(24日)

で、「Webサイトのポリシーがコピー&ペーストで作られている」のではないかということを示されている。
それは現在Web上に存在する不完全なポリシーやあるいは複数サイト間のポリシーの類似性を元にした論だったのだけど、今回のメールは教育センターの姿勢がまさにそうであることを示している。


「リンクには校長の許可が必要です」という規約。
その規約は「有害サイト等から学校と児童生徒を守るという観点から」規定したという。
つまりこの規約の「目的」は「有害サイト等から学校と児童生徒を守る」ことだと主張する。
ところがそのすぐ後に「見直しをする」と言っている。
本当に「学校と児童生徒を守る」という「目的」が達成されているのなら、いったいどうして見直しをする必要があるのだろう?
その見直しの理由は「一般のWebページや公共のWebページにつきましてはこうした表示がなされなくなってきた」からだという。
つまり「学校と児童生徒を守るという目的」よりも「周りのページが変わってきた」ことの方が、仙台市教育委員会にとっては重要であり大事なのだ。
少なくとも、このメールを素直に読むとそう思わざるを得ない。


「校長の許可が必要です」というポリシーはおかしいのではないか? という私の問いは「無断リンク禁止」を糾弾したかったのではない。
そんな言葉をサイトに掲げるだけでは「有害サイト等から学校と児童生徒を守る」という目的を達成できないと思うから、おかしいのではないか? と言いたかった。いや、その考えは以前からちゃんと伝えてあったのだ。


情報モラル部会

教育委員会(教育センター?)には「情報モラル部会」なるものがあり、こんな活動をしていますと得意げに宣伝している。
なのになのに、こんな内容のメールを返されたことが、本当に、残念で、悔しくて、悲しい。


今回はもう少し食い下がって回答を求めていくつもり。


追記 (2006/10/21)
上の「もう少し食い下がって」は、話題を「有害サイト等から学校と児童生徒を守るためには本来、どういう手段が適当だったのか?」ということに向けていきたい、ということ。
今のところ、なしのつぶてである。


追記 (2006/12/5)
何通かメールしたけど、やっぱりなしのつぶてで返事がこない。
だけど、

http://www.sendai-c.ed.jp/~kuromatu/kitei.htm

のページから該当の項目が消えて、トップページから「許可なく転載・転用・複製・リンクすることをお断りします」の文言が消えている(ローカル保存しておいたものと比較した)。

仙台市立東仙台小学校トップ

には残っていたりして市全体で修正されたわけでは無いようだ。まぁ、学校だし、年度の変わり目でメンテナンスされるのだろうけど……。

私は別にはてなにメールしていません [etc]

上で「不干渉」と書いたのに、今日ふとはてなブックマークのトップページを見たら(普段は見ないのにね)、まさにホット。
そこに書かれていることを見て思いました。
私とは正反対だ、と。
ということで、書いてみました。

私は、Webサイト及びブログのリンクは、必ず該当のページに貼るのが作成者、執筆者、管理者に対する、利用者としての最低限のマナーであると考えます。
私もはてなを利用しては居ますが、他のユーザーとは違い、意味もなくトップページへリンクを貼るような真似はしていません。
その件に関して理由があります。
リンクはすべてサイトの中の言及しているまさにそのページに貼るのが礼儀だと深く受け止めているからです。それが、リンク先を管理する方の為にもなると私は信じます。
ですがあなた達のブックマークの利用の仕方は、リンク先を管理する者の権利を無視したあげく、集団で罵倒するなどの行為をし、
まさに顔が見えない相手へ集団で嫌がらせをしているように見えました。
この様な形式で個々のユーザが登録リンク集を利用する、無謀な人が多いことにショックを受けました。
私は見ました。
とあるブロガーさんが、
「ブログページのトップへリンクを貼られて嫌な思いをしています。ブログを閉鎖して普通のサイトに戻したい*2ぐらい、最悪です」
とお話しされていたのを今でも覚えています。
私は彼女の意見に痛く*3共感しました。
私もずっと前からブログにアクセス解析を貼り付けており、リンクの集計先を見て、ブログトップページへリンクが貼られていたりするのを見て随分嫌な思いをしたものです*4
この様な思いを二度としたくないと考えましたが、リンクを制限することは技術的に不可能です。
無断でリンクを貼られるのを阻止するには、トップページではなく個々のセクションをブックマークすることが容易になる様にすることです。そのためのリンクをセクションのすぐ下に表示するようにしました。
それでも、リンクを貼る前にわざわざリンクしてもいいですか? と尋ねてくる者がおり*5、リンクの前に確認をとるのを当たり前と考える酷い人まで現れ、更にショックを受けてしまいました。
リンクしてもいいですか? という尋ねてくる人がどんどん増え*6、執拗な確認を受け、今私は精神的に大きなダメージを受けています。
そのダメージは、はてなのユーザーの無謀さで更に酷い状態に陥っています。本当です。
私は今、自分もはてなユーザーで有りながら、他のはてなユーザーの人の言うことをすべて信じることが出来ません。
理由は、ルールを守らない人が多いからです。
ブックマークへサイトを登録するのなら、必ずリンク先の管理者が定めるルールを守ってもらいたいと思いました*7
そのためには、どうしてもはてなユーザーの方とシステムの管理者の方に言わねばならない事が出てきました。


箇条書きにします。
今後、私のサイトを利用するのならば、また、リンクを貼りたいのならば、必ず守って下さい。
金輪際、トップページへリンクを貼るのを辞めて下さい。
サイトは、ページ単体ではなく、いくつものコンテンツが揃い、利用者が守ってこそ初めて成り立つ物なのです。
あなたたちが無断でトップページへリンクを貼ったりすることは*8、そのWebサイトを崩壊へ導く行為に繋がっているのです。


さて、これは明確にパロディ、あるいはパスティーシュであるので私としては著作権を遵守するために引用元を示したいわけだけど、なにしろその当人が「トップページ以外リンクしてくれるな」と言っているので困惑しているわけで。
ま、いいや。はてなユーザID tinycafe さんの2006年10月17日のダイアリーが元ネタです。
これで目的は果たせるわけだし。リンクすなわちhtmlのAエレメントによるもの、というのは幻想もいいとこだ。


はてなブックマークのコメントに『「アンテナに追加」ボタンが痛々しい。』とあったけどアンテナは必ずトップへのリンクになるので構わないのでは?
はてなブックマークへの追加ボタンがあったら、まさに痛々しいけど。


追記
うーん。やっぱり同じことを考えた人がいたか、と思った。
さて。
しかし何だ。はてなユーザID tinycafe 氏の発言(無断リンク禁止がらみに限るけど)を読むと、私は非常に気分が悪くなるし、イライラする。だから"干渉せず"でいた。

http://arasikuruna.g.hatena.ne.jp/yappo/20061017/1161063338

のコメントを読んだ瞬間、理性よりも感情が先に立ち上がってきて、怒りとか気持ち悪いとかムカムカするとか、もうついぞ経験したことがないぐらい腹立たしかったりしたわけだ。
氏は自分の発言が他人をどれほどいやな気分にさせているのか? ということを想像しないのだろう。もちろんそれはお互い様で、上の様なパロディがどのくらい氏をいやな気分にさせるのか、それは私には想像もできない。
想像しようとしてもできない、のだな。
人間の想像力は無限です、なんてのは嘘だ。
自分の想像力はある程度の「枷」に縛られている。それをパラダイムと呼んだりスキーマと呼んだりしてもいいけど、まぁ名前には意味がない。


閑話休題。
真似、パロディ、パスティーシュ、どう呼んでもいいが、その手法は置いておいて、上に書いた文はかなりの部分で自分の本心でもある。
正反対なのに、文章の論理構造はそっくり。
書いていて気味が悪い思いをした。「自分が今書いている文」に対してじゃない。パロディを書くことで、オリジナルの文が自分にとってとてつもなく気味が悪く不快なものであるということ、それが逆に実感できた。
いやしかし本当に。
「あなたの書いた文がどれほど他人を傷つけ、不快な思いをさせているのか、ということを一度想像してみたらいかがですか?」
というのがどれほど無効な発言であるかを実感してしまった、これはなかなか貴重な経験だぞ、というのが今の偽らざる想いだったりする。


もっかい追記
よく読んでみると、id:yappo 氏のエントリの一つ一つに「真似するな」とコメントしているのを見て、他でもない tinycafe 氏が自分自身のサイトに書いていた「粘着厨」という言葉を連想させる行動を自分自身でとっているんだなぁ、などと今は少し冷静に感じている。 → 失礼しました。これは私の勘違いでした。コメント参照のこと。


追記
このパロディはあとになって、意外な展開で再びWeb上に姿を現します。

斯くのごとくしてオリジナルは失せパロディは……

リンクフリーです。リンク先は必ずトップページでお願いします [etc]

上のセクションの続き。

リンクはすべてサイトのTOPに貼るのが礼儀

とか、

大体がリンクフリーと称されるのはTOPだけ

というのはあながち妄想というわけではないと思う。


"リンクフリーです" "リンクは*お願いします" - Google Search

これが8万件以上ヒットする(これを書いている時点で)。
全部が全部「リンクフリーです。リンクはトップページにお願いします」ではないにしろ(まず先頭が違うし)、「リンクフリーです。リンクはトップページにお願いします」とか「リンクフリーです。リンクは以下のURLでお願いします」なサイトは確実に数万〜数十万のオーダで存在すると、そう見積もっていいんじゃないか、と。


追記 08/11/06
今だと、

"リンクフリーです" "リンクは**お願いします" - Google Search

"リンクフリーです" "リンクは**にお願いします" - Google Search

"リンクフリーです" "リンクは**へお願いします" - Google Search

などか。(一番下の検索結果が素晴らしい!)

*1 斜め読みすると文の意味がシーケンシャルに頭に入ってこなくて、認識が文の順番通りに進まないことはよくある。それを示している。

*2 普通のサイトの方が適切なコンテンツに誘導する構成にするのは楽だからね。

*3 これは間違いで、甚く、が正しい。それなのにしっくりくるのはなぜだろう?

*4 何しろトップページにリンクを貼られてしまったら、該当のページはずっと過去の方に流れ、結局カレンダーとかカテゴリを利用して探すしか無いわけだから。

*5 実際はいないけど。前述のブックマーク用のリンクは、つまり暗にブックマークしても構いませんよ、と示しているということだし。

*6 これが本当なら書きがいがあるというもの。

*7 この辺はうまくパロディにならないな。この文脈での"ルール"というのは幻想(個々人の幻想か共同幻想かはおいておくとして)なわけだし。

*8 元の文は「ページ単体へリンクを貼ったり、コンテンツ単体へリンクを貼ったりすることは、」だった。ページとコンテンツは何が違うかというと……、後者は画像などのことなのだろうな。