2008-02-02 [長年日記]
■影が行く 読了
影が行く/ジョン・W・キャンベル・ジュニア
中盤までは、退屈だな、と思った。
映画(ジョン・カーペンター監督作品のバージョンしか見たことがないが)の方がテンポよく、明快な気がした。
また、逆説にも思えるが、映画では序盤では「あれ」はなかなか姿を現さない。小説版では、最初に氷漬けの状態で出現する。
映画では、たしかに最初に「あれ」の姿を出してしまっては拍子抜けである。映画スタッフの判断は正しい。
その先入観もあって、小説ではあれれ? ということになってしまった。
中盤、「あれ」の正体・性質が明らかになるところから、ようやく映画版の呪縛から抜けられた。
「あれ」に関する考察。血清によるテストの提案と失敗。
ゆっくりと面白くなっていった。
p212
「あいつは全員を乗っ取ったのかもしれない――おれ以外の全員が、いろいろと考えをめぐらせながら、好機をうかがっているのかも。いや、そいつはあり得ないな。それなら、連中は飛びかかるだけでいいんだ。こっちは手も足も出ない。まだ人間のほうが、数が多いにちがいない。でも――」そこでことばをとぎらせる。
マクレディは短く笑って、
「ノリスも同じことをいってたよ。『でも、あとひとり変わったら――力のバランスが崩れるかしれない』とね。(略)
買収ファンドにおせるレバレッジの原理のよう。
参照のこと。
探検隊帰る/フィリップ・K・ディック
火星から生還を遂げた探検隊が、歓喜から困惑、そして恐怖へと変わっていく様が、怖い。
吸血機伝説/ロジャー・ゼラズニイ
機械の時代、「中央」の支配を逃れた機械が"伝説の怪物"と化す。
そんな物語。
ごきげん目盛り/アルフレッド・ペスター
アンドロイドと主人。
それらの一人称の妙。
短編小説の醍醐味。
唾の樹/ブライアン・W・オールディス
中編か。
怖い。
異星からきた異物。
農場。
殖える家畜。
追い繁る植物。
不可視の怪物なんてものがでてくるが、その怪物の描写なんかよりも農場の描写の方が怖い。