過去の日記

2007-04-17 [長年日記]

犯罪不安社会 [book]

犯罪不安社会 誰もが「不審者」? (光文社新書)

  • 作者: 浜井 浩一,芹沢 一也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売: 2006-12-13
  • ASIN: 4334033814
  • メディア: 新書
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である。
読み終えてから時間が経つのだけど、どうもこの本について書く気になれないでいた。
まとめきれないと思えたからだ。

で、今回書くことに決めたのは何かというと、NEXT WISE とかいうフリーペーパーの書評。

1万円の世界地図 (祥伝社新書)

  • 作者: 佐藤 拓
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売: 2007-02-27
  • ASIN: 4396110634
  • メディア: 新書
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を取りあげている。
ここに、

「日本の犯罪の4件に3件は未解決」「05年における日本人の生涯未婚率は男性15.6%、女性7.2%」など、やりきれない統計結果にはリアルな危機感を憶えてしまう。

とある。
読んだ瞬間に「『日本の犯罪』というところの母集団は何?」「生涯未婚率の定義は?」と反応した。
まぁ、この本を読めば書いてあるのかもしれないが、書評でこれは無いだろう。それが何であるのか説明しないまま、数字だけを表に出すことに強い拒否感を憶えた。(ちなみに上の質問の答えは「統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか? (光文社新書)(門倉 貴史)」にちゃんと書いてあった)


で、「犯罪不安社会」である。
「安全神話の崩壊」などと言われはじめて久しいが、「安全神話の崩壊」自体が神話だと主張するものだ。
筆者は2人。
2人がそれぞれ2つの方向から、都合4つの方向からアプローチする。


まずは統計という観点から。ここでは「統計に騙されない」、「統計の真の姿を知る」ことに費やされる。
上で引用した「日本の犯罪の4件に3件は未解決」なんてのもそうだ。
この結果を良しとせず、解決率=解決する割合を増やそうとするにはどうするか? 軽犯罪、自転車の窃盗とか、そういうところに人員を費やせば、数字は上げられるだろう。だが果たしてそれでいいのか? という見方。
あるいは、警察が事件を受理しなければ見かけ上の解決率は上がる。それでいいのか?
そして、事実、警察が事件を積極的に受理するようになった結果としての「解決率の低下」であると本書は主張する。
それ以外にも様々な統計を駆使する。といってもある主張をしたいがために多くの統計を持ち出すわけではない。
統計の母集団を説明する。項目としてカウントされるのはどんなケースか? をフローを用いて説明する。似た指標を出す複数の統計を並べ、どの統計がどんなバイアスがかかるのかを説明する。
統計を見ることを難しさを知っているし、そしてそれを伝えようとしているという姿勢が感じられた。


次に、メディアによる「凶悪犯罪の語られ方」という視点から。
言葉を変えようか。
凶悪犯罪なるものをメディアはどの様に語ってきたか。そしてその変遷を論じる。
酒鬼薔薇事件の時のことをこう語る。

p91
挑戦状の内容が公表されるとメディアはまたも推理ゲームに熱中した。いつものように、推理作家・犯罪学者・精神科医・心理学者などを動員して、さまざまに犯人像を描き出した。

……私自身はそういった番組や雑誌との縁は浅いが、確かにその通りだったように思う。
ここで、そのメディアの態度を「推理ゲーム」と断じているが、さてそのゲームが終わったときに、何が残ったのか。

p109
いつ少年たちに襲われるかもしれないという『白日の悪夢』に変容したのだ。


そして地域防犯活動、つまり「地域ぐるみで子供たちを守ろう!」の話へと移る。
でも、「守る」って、一体誰から?
という問いを投げかける。
それは、地域に住む「もしかしたら犯罪を犯すのではないか? という疑いがある者」なのだ。
けれども「その問い」は、地域防犯活動の中にあってかえりみられることはあるのだろうか?
過剰な地域防犯活動の行き着く先を、本書は予想する。そこに誇張は感じられない。
地域ぐるみで同じ目標に向かうことによる感動、達成感。それは快楽。
けれど、その原動力は、不安。それも具体的な形のない不安。
防犯活動が、その不安に形を与えるという皮肉。

p184
それは揃いのジャンパーに身を包み、「防犯」という腕章をつけた善意の住民たちの目に、異質な者として映る者たちでしかない。だが、そうした異質者たちが不審者として、今社会から排除されている。


そして最後が、刑務所の真実。
実際に刑務所に勤務した際にかいま見た姿。
受刑者はそこにいる。あふれるばかりに。
だが懲役刑の作業をまともにできる受刑者は、少なくなっているという。
社会にでても職につけない、その能力も、気力もない者ばかりだという不自然な状態。


統計から社会学、そして刑務所で実際に見た景色からまた統計へと移る。
様々の角度からの視点が、この一冊に詰まっている。
ありがちな、「ただ一人の想像だけで書かれた本」と一線を画するのは、そんな様々な角度からの視点だと、思う。

Amazonからの腹立たしいお知らせ [comic]

私は加護女 1 (少年チャンピオン・コミックス)

  • 作者: 高橋 葉介
  • 出版社/メーカー: 秋田書店
  • 発売: 2007-04-06
  • ASIN: 4253212719
  • メディア: コミック
  • amazon.co.jp詳細へ

が「現在好評発売中です。 ご注文は以下をクリック」というDM。
でも、Amazon で在庫に無いことを知っていた。
増刷して入荷したのかな? と思って確認してみると……まだ在庫ないじゃん!
腹立たしー!
……在庫が入ったけど売れちゃったとか?? まさかね。

タイトル [気になる本]

こういう類型(パターン)のタイトルって、すでに陳腐なように思うのだけど気のせいか。

そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか?―領収書からみえてくる企業会計・税金のしくみ

  • 作者: 大村 大次郎
  • 出版社/メーカー: 日本文芸社
  • 発売: 2007-04
  • ASIN: 4537254858
  • メディア: 単行本
  • amazon.co.jp詳細へ