2008-03-17 [長年日記]
■「牛の首」 ネタバレ注意!!
聞いたらあまりの怖さで死ぬとかおかしくなるとかいう「牛の首」と言う話が知りたいのですが
http://q.hatena.ne.jp/1069654969
小松左京の短編小説に同名のものがある。
の巻頭に収録されている。
他には、
にも収録されているようだ。
では、ネタバレをこれから書きます。
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一人称小説。
「こわい話もずいぶんきいたけど……」とS氏は、急にあらたまった口調で言った。「やっぱり一番すごいのは……」
という書き出しで始まる。
そして「私」は"牛の首"という"本当にこわい話"の存在を聞きつける。
が、誰もその中身については口をつぐんで話そうとしない。
「もう、あの話だけはよそう」
「それがなかなか――」(略)「いえないし――、実をいうと、思い出す*1のもいやなんで……」
という感じ。
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最後に「私」は気付く。
それは題名と、非常に恐ろしい話だということだけわかっていて、その内容は誰も知らないのだということに。
あんなものすごい話は
誰もどんな話か知らないのに、その恐怖だけが
そして結末。
「私」がある人に、"牛の首"という怪談があるそうですね、と尋ねられ、そして応える。
「ああ……」私は顔が青ざめるのを意識しながら、低くつぶやいた。「知っているとも――あんな、恐ろしい話は、きいたことがない……」
と幕引き。
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という内容のショートショートなのである。
このショートショートの何が「怖い」かというと。
物語世界の「私」と同じ情況に、読者も陥るからなのだ。
聞いたらあまりの怖さで死ぬとかおかしくなるとかいう「牛の首」と言う話が知りたいのですが
というはてなの質問に、なんと回答すればいいのだろう?
小松左京に「牛の首」というショートショートがある。
それは実は、題名だけが伝えられていて、その中身については誰も知らない、という物語なのです。
と答えたとしよう。
……そう。答えになっていない。
これが答えだと認識する人はいないだろう。
物語の中の「私」の状況が、物語を超えて現実の自分にも降りかかる。
「小松左京の"牛の首"という題名のショートショート」であるはずの作品が、その内容を説明しようとしたとたん、物語の中に自分が組み込まれてしまったことに気がつくという恐怖なのである。
以下余談。というか完全に蛇足だな。
それとは別に都市伝説として語られている"牛の首"という話もあるようなのだけど――。
それが小松左京の"牛の首"が発端であって、つまり、題名だけで中身の無い話に誰かが中身を与えようとした
出てくるのだけどそれを確認できないあたりもまた、この話の怖いところ。
*1 引用者註:本文では傍点での強調。