2007-01-21 [長年日記]
■ソフトウェア開発の潜在的な矛盾
人は変化を嫌う。
システムを刷新し、新バージョンを入れる。
「○○が無くなった」
「△△の仕様が変わった」
「××が追加になったが判りづらい」
否定的な評価や意見――あるいは単なる感想――を聞く羽目になる。良くなったところをわざわざ褒めたりしない。それよりも、○○が無くなったこと、△△の仕様が変わったことの方がより重大なのたから!
仕方がありません、じゃあ前のバージョンと同じ様な動作をするような△△に設定項目を追加しましょう。あるいは――確かにその通りです。○○を新しいシステム用に作ります。
……人は変化を嫌う。
新たなITシステムは経験者を初心者にし、時間を掛けて得た「もの」を破棄せよと迫る。
だけどIT業界は、旧来のシステムを残しておいてもらっては、困る。古いシステムについて経験のある技術者を留めておくのに、どのぐらいの人件費を使うだろう? その技術者を新しいプロジェクトに投入できたら、新しいプロジェクトはどれほど楽になるだろう? と虚しい皮算用をする。
5年も経てば、OSが変わる。
曰く、
あなたのところでお使いのシステムは Windows NT 4.0 Server で動いています。もし今後思いもよらない問題が発生しても、私どもの所では調査ができません。
新しいサーバOSに乗り換えればそのような心配は無くなります。つきましてはシステムの方もバージョンアップしておりますので、そちらに移行する必要があります。
そして、謎の質問が発せられる。
そのバージョンアップしたシステムは、前のものと同じ様に使えるのか?
やはり、謎の答え。
もちろんです。古いシステムと同じ感覚で操作できます
……ならバージョンアップする意味は何処にありや??
古いもので十分に間に合っていたとしても、常に新しいバージョンを買ってもらわないと立ちゆかない、そんな業界。