2007-08-26 [長年日記]
■心霊理論
素晴らしい。
何がいいって、このテーマ。タイトルを見た時から傑作の予感がしていた。
そして編集序文を見て、井上雅彦の狙いの正しさを感じた。
この巻。今までの《異形コレクション》とは違い「怖がらせること、ぞっとさせることが条件」を条件としているのだ。(一応書いておくと、《異形》な作品には「ちょっと奇妙な話」や「ブラックコメディ」なども含んでいるので必ずしも「怖い」とは限らない。この様に「怖がらせる」という縛りが課せられるのは珍しい。また、編者の提示した条件が、読者側に明かされることも珍しい)
「理論」の提示を求めておき、一方で「恐怖小説」「ホラー小説」も条件にする。
これはすごい。
「屋上から魂を見下ろす」斉藤肇
この巻の一番のお気に入り。
「呪い」と「死」。
その考察から「呪いの解体」へと繋がるストーリーだが、「解体」が同時に「再構築」でもあるあたりに唸らされた。
「古き海の……」柄刀一
判りやすい展開に目をそらされてしまい、最後の一行で驚愕。
というかちょっと非現実的?
それも含めて計算しているのだろうけど。
「自己相似荘(フラクタルハウス)」平谷美樹
一番の「論理で押してくる」タイプだと思って読んだ。
なぜ「幽霊屋敷」となるのか?
シェイクスピアの引用。
論理も綺麗だが、そのピースや道筋も綺麗。
「くさびらの道」上田早夕里
一番怖かったかも。
SFホラー。「くさびら」って言葉知らなかった。
ここに挙げなかった他の作品も総じてレベルが高く、「酒の夜語り」に匹敵するテーマの独自性も相まって、シリーズ屈指の出来栄えかと。