2008-09-10 [長年日記]
■ホラー映画クロニクル
内容が濃い。読み応えがありそう(さすがに半日で全部読める様な分量ではない!)。
面白いと思ったのは、ホラー映画を国別に並べている構成。
まず、ハリウッド・ホラー映画史については、サイレント期に始まって(!)トーキー初期〜50年代が来て、あとは60,70,80,90年代と来て21世紀。
次にヨーロッパ・ホラー映画史となって、ここが国別になっている。次のアジア・ホラー映画史も同様。
なぜこんな構成なのだろう?
時代に変わらずホラー映画を輩出し続けているのはハリウッド(というかアメリカ)のみで、他の国については"時代が偏る"からだと思った。
例えば。
ドイツといえば、最初期のホラー映画の「ノスフェラトゥ」と「カリガリ博士」がパッと出てくるけどあとはなぁ、という印象。
果たして紙面を見ると、やっぱりページが割かれるのは上の2作であった。
けれどこの本のすごいところは、それだけで終わっていないところ。
それ以降についても、時代に沿ってドイツのホラー映画についてちゃんと解説している。
他の本*1では名前さえお目にかかれない様な作品についても、しっかりと言及されているのがすごい。何点かのスチール付きで。
もちろん、サイレント期の記述で章の半分が使われるのは仕方がないだろう。
「ホラー映画」というジャンル全体から見たときに、ドイツのホラー映画が果たした役割を考えれば確かにそうなるのだから。
でもそこで終わらないで網羅的に作品を挙げているところがこの本の価値ではないか。
基本的に、
- ホラー映画史的概論と考察。「その国のホラー映画事情」と「ホラー映画全体から見たときにその国の映画が果たした役割」の両面から論じられている
- 著名な監督・脚本家(あるいは著名作の監督)
- 著名なキャラクター
- 著名な俳優
- 傑作セレクションと称した、各作品ごとの解説と解題
という様な構成か。
編集的に見て読みづらいと感じるところもあるのだけど、これは文章量とトレードオフになる問題でもあり、目を瞑りたいところ。
「国ごとに紹介する」というのはちょっとびっくりしたのだけど、全体に目を通してみると、ホラー映画全体の流れを把握するにはこの構成が非常にうまくできていることに気づかされる。
スチールなどもふんだんに挿入されているし、クロニクルの名に相応しい内容と編集方針だと思う。
個人的な感想。
イギリスのホラーに「夢の中の恐怖」が『傑作として名高い』と書いてあった。ちょっと驚きと納得。
「失踪 オリジナル版」が無いのが意外。
観たときの感想は、
で書いた。
これが無いのは残念だけど、ハリウッドでリメイクした方が酷評されているからか、サスペンスと見なされているからか。
追記
クロニクル(年代記)の名前の通り「ホラー映画史を全体的に俯瞰する」というのが方針だということか、特定の作品、シリーズ、監督に多くのページを割くということを全然していない(多くて1ページだ)。
冒頭に「内容が濃い」と書いたことで勘違いされるかもしれないので、一応書いておく。
追記
よく見ると「シックスス・センス」がオミットされてるな。ホラー映画じゃないってことか。まぁ、納得できるけど。
フッタにDVD GALLERYというのがあって、これがDVDになってるのか? 観たい! と思うものが多くあるという罠。
特殊メイクや特殊効果の歴史や名士たちのコラムもあって、こういう記事は久々に読んだ気がする。
ぐだぐだと
「呪われたジェシカ」見たいなぁ。DVDにならないかなぁ。
関連
「ファンタズム」の扱いが小さいな。
「バタリアン」と「DAY OF THE DEAD」って同年だったんだ!
「ファイナル・ディスティネーション」のDVD、廉価版があるのか。( asin:B0009Y29EM ) これ近くのレンタルショップにないんだよなぁ。ビデオはあったのに、見損ねてしまった。
「血ぬられた墓標」も一度ぐらい見てみたいが……。
*1 ホラー映画のカタログ的書籍を意識している。専門雑誌などではなく。