2008-08-02 [長年日記]
■数学ガール 整数の《本当の姿》
フェルマーの最終定理の証明に関しては、最後の10章でのみ語られる。
フェルマーの最終定理は、その命題だけを見れば整数しか現れない。
けれどその証明には、今のところ楕円曲線という別の世界への橋を渡らなければ到達できないわけで。それが証明を解説するのが難しいところでもあり、あるいは証明までに長い時間を要した理由でもある。
今のところ、整数しか現れない命題に「初等的な証明はない(p335)」のだ。
では、この本はというと。
「数というものの《ほんとうの姿》(p25)」は何なのか? どこにあるのか? どこを通ればたどり着けるのか?
あるいは、それを追いかければどんな世界を垣間見ることが出来るのか? というのが大テーマ(だと勝手に思った)。
そのための道具立てが「フェルマーの最終定理」。
そこにたどり着くまでに見える世界は豊穣で、広い。理解するのは難しく、けれど想像することが楽しいほどに。
テトラちゃんが、群というキィワードを頼りに、想像の翼を広げて楕円曲線という世界を垣間見る瞬間があった。
その一行一行を、テトラちゃんの世界が広がる様を、ゆっくりと堪能した。
それは、私にとっては「感動した」と表現するのに値する時間──。
■統計的言語モデル
ぶっちゃけきしださん(id:nowokay)が薦めていたからという理由で買ったわけだけど、これはいい本だ!
音声認識システムというタイトルなのだけど、音声を扱わない自然言語処理、言語モデルを勉強したい人でも問題なくお薦めできる。
音声認識なのでフーリエ変換とかフォルマント(懐かしい!!)とか出てくるけど、音声関係ない人は無視していい。
NN法、パーセプトロン、SVM(サポートベクターマシン)にニューラルネットワーク、ベイズ推定から、システム評価法(分割学習とか効果確認法とか)にチューニングまで。
モデルとしてはHMM(隠れマルコフモデル)と学習のさせ方。
正規文法に文脈自由文法。
これだけの範囲を扱っていて、なお説明は読みやすい。
数式は出てくる。定式化が必要な部分ではちゃんと式を使って説明するのだけど(そうでなかったら評価はもっと低い)、その前後の説明や図表の使い方がうまい。
これは良い買い物だったと思う。
*1 これを書いている時点では、です。