2011-11-02 [長年日記]
■28週後を観た
ちょっと前の話になるが、28週後を観た。
とても面白く観たのだけど、それはどうしてかというと、これって『悲劇』だよな、という感想からである。
悲劇というのは、結末がハッピーエンドかアンハッピーエンドかといったレベルでのカテゴライズではなくて、
登場人物に誰一人として悪意を持って行動する者がいなく、全員がよかれと思って行動しているにも関わらず、状況が悪い方へ悪い方へと転がっていってしまう
タイプの話のこと。
ホラーでのステロタイプ的「小心者ゆえに愚かな行動を取ってしまう」人物こそいるものの、端役であって、ちょっと目立ってしまったエキストラという感じ(失礼な)。
この作品の主な登場人物はみな「よい人」で、良心とか、職業的使命感とか、家族愛とか、伴侶への愛とか、それぞれの規範にかけてよかれと思った行動を取る。
もちろん映画の外からメタ的に観ている分には、短慮で愚かとしか思えない行動もある。そもそも発端となるのが、子どもが起こす子どもらしい行動だったりする(ただそれさえも家族や故郷への愛を動機として見せているのだが)。
そうはいっても、悪人だったり、エゴイスティックだったり、屈折していたりといった、感情移入しがたい人物は一人もいない。
言葉を換えれば、自分の周りにいたら嫌だなという感じの人物が(主要登場人物の中には)いない。
しかし、それにもかかわらず、事態は悪い方へ悪い方へと転がり続ける。
それこそが「ホラー」なんじゃないか、と言うこともできるのだけど……。
ホラー映画的な描写や設定でありながらドラマ的には『悲劇』という印象を受けるこの作品、結構気に入ったのであった。